そもそも人工透析とは、機能が低下した腎臓に代わり、人工的に不要な水分や物質を体外に出し、尿毒素に汚染された血液をきれいにして体内に戻す治療のことです。
腎臓は、老廃物の排泄や水分、電解質バランスの調節、造血刺激ホルモンの分泌、ビタミンDの活性化、血圧の調節など、健康な生活を送る上で欠かせない働きをしてくれる大切な臓器です。特に、尿を生成し体外へ排出することで血液をきれいにする濾過機能は、体内の健康バランスを保つ上でも最も重要な機能と言えます。
ところが、病気によって腎臓の機能が低下することのダメージと機能回復のバランスが崩れてしまうと、慢性腎不全を発症します。
慢性腎不全になると、尿毒素や水分、カリウムやナトリウムがどんどん体の中にたまって影響を及ぼします。
慢性腎不全はさまざまな病気のため、数年または10年以上という長い間に、少しずつ腎臓の機能が低下していきますが、いったん慢性腎不全となると腎臓の働きが元に戻ることはありませんので、人工透析治療が必要となるのです。
慢性糸球体腎炎は、血尿、蛋白尿、高血圧の症状が長期(1年以上)にわたり続いたり、あるいは急性糸球体腎炎が治らないで慢性化する糸球体の病気です。
具体的な症状は病気のタイプによって様々で、自覚症状がなく健康診断などで偶然に見つかるタイプ、高血圧を伴うタイプ、ネフローゼ症候群の症状が見られるタイプ、急性糸球体腎炎から引き続いて起こるタイプ、感染症によって急に発病するタイプなどがあります。
IgA腎症は、何らかの理由でIgAと呼ばれる蛋白質の一種が増加し、腎臓にある網目状の組織(糸球体)がふさがってしまい、尿毒素が濾過できなくなってしまう状態のことを言います。
糸球体は、腎臓一つに約100万個ありますが、この内どれぐらいの糸球体が、IgAによりふさがってしまったかによって病気の進行をはかることができます。しかし、例えば30%の糸球体が機能しなくなった場合でも、残りの70%の糸球体の働きにより機能を保つことで、検査結果や自覚症状共に異常がないことがありますが、50%を過ぎると残りの糸球体ではリカバーしきれなくなり、身体のだるさや、尿が出づらい、貧血などの症状が現れます。
ネフローゼ症候群は、何らかの原因で蛋白質を血液中から尿へと放出しやすくなってしまい身体のむくみなどが出やすくなる状態を言います。 厳密には病気や疾患というより、蛋白尿が出やすくなる症状の総称です。糸球体に異常が起こることで発症し、糸球体が何らかの原因で膨張して蛋白質を通すことのできる大きさになってしまうことで、蛋白質が尿に漏れ出やすくなります。
糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症のひとつで、糖尿病の悪化(高血糖、低血糖の頻発)により毛細血管が痛み、それがきっかけとなって引き起こされると言われています。
糖尿病の症状に加えて腎機能が失われ、老廃物が体に溜まり、むくみ、頭痛、高血圧や顔色が悪くなるなどの症状が現れます。
高血圧が長期間続くと腎臓の血管に動脈硬化症が現れ、それにより血管の内腔が狭くなり、腎臓へ流れる血液量が減少することで腎臓そのものが硬くなり機能障害が起こります。
腎硬化症には、病気の進行が遅い良性腎硬化症と急速に症状が悪化する悪性腎硬化症の2つのタイプがあります。前者は動脈硬化症が大きな発症要因ですが、悪性の場合についてのはっきりとした原因は解明されていません。
尚、腎機能が低下してむくみなどの症状がなければ、特別な食事制限などは必要ありませんが、高血圧やむくみ、動脈硬化が進行している場合などは塩分や蛋白質などの摂取をコントロールする必要があります。
人工透析は、実際には、人工腎臓と呼ばれる「ダイアライザー」に体内の血液を送り、本来腎臓が果たすべき機能の一部である水分の除去や老廃物質・有害物質の除去、電解質の濃度調節、血液pHの改善を行い、血液をきれいにして体内に戻す治療となります。
人工透析は、症状等により異なりますが、概ね、平均週3回程度、1回約4~5時間行われるのが一般的です。
人工透析を早過ぎず、また遅すぎず(手遅れにならず)に開始することは、実はとても難しいことです。
実際には、できればご自身の腎機能を全て使いきった時点で透析を開始することが理想なのですが、糖尿病性腎症などは尿素毒素、クレアチニンなどの尿毒素の値があまり高くなくても肺水腫などを起こし、透析の開始が遅れたために、生命の危機を招くこともあります。
また、透析開始が遅れたために、つぎつぎに余病を起こしてしまい社会復帰が大幅に遅れる可能性もあります。
そのため、原因となっている病気が糖尿病性腎症や腎硬化症の方、高齢の方では、他の腎炎などの方や若い方にくらべて早く透析を受けて頂くことをお勧め致します。
まずは、お気軽にお問い合わせ下さい。
見学日のご予約をして頂くとともに、人工透析が初めての方は、ご不明な点、疑問・質問など何でもお気軽にご相談下さい。
院内の見学(予約制)は、随時行っております。
当院の施設をご案内させて頂き、設備に関するご質問などもお受けしております。
患者様ごとのライフスタイルや、お仕事の予定などをお伺いさせて頂き、治療のスケジュールを一緒に考えていきます。
当院にて人工透析を行っていくことをお決め頂きましたら、オリエンテーションを行い通院に必要な物やご来院時の流れなどについてご案内をさせて頂きます。
策定したスケジュールに基き、人工透析を行います。
当院では、栃木県内初採用の最新機器を導入しており、通常の透析HDはもちろん、全機種がオンラインHDFや、新しいHDF療法(間歇補液HDF/i-HDF)が施行可能です。(H27.7.1より施行可能)
当院では、透析患者様の合併症予防と軽減に効果があるオンライン HDF治療を行うことが可能です。
まず、HDFとは血液濾過透析という血液浄化療法の一つで、血液透析(HD)と血液濾過(HF)の併用型です。そして、HDFには、オフラインHDFとオンラインHDFがあります。また、置換液を注入する場所により前希釈方式と後希釈方式があります。
オフラインHDFは、置換液に瓶や補液パックに入った薬剤を置換液に使用するため、後希釈方式での治療が主となります。これに対しオンラインHDFは、置換液として無菌化した透析液(超純水透析液)を注入するため大量に置換することができます。前希釈方式のオンラインHDFとは、置換液(透析液)の注入場所がヘモダイアフィルタの上流である方式であり、後希釈方式のオンラインHDFとは、透析液の注入部位がヘモダイアフィルタの下流である方式です。
前希釈方式では、血液は一度希釈された後でヘモダイアフィルタに入り、濾過が行われるので、 置換量が等しい場合には後希釈方式におけるよりも尿毒症物質の除去効率は低下します。
そこで、後希釈方式のオンラインHDFでは、一回治療あたりの液置換量が20リットル程度であるのに対し、 前希釈方式のオンラインHDFでは24~98リットルの液置換が行え、後希釈方式の血液濃縮による血球細胞への影響も少なく、大量に置換することで溶質の除去効率も増加します。
従来の血液透析療法(HD)では治療後半になると過度な除水により末梢循環障害の状態に陥り、しばしば、急激な体液量の減少に伴う血圧低下を招くことがありました。
そして、この末梢循環障害により治療中に生じる関節痛、皮膚掻痒感、イライラ感などを軽減、あるいは無くすことを目的とした治療方法がi-HDF療法です。
i-HDFは、透析を行う時間の内、約30分おきに100~300mlの補液を行い、過剰水分の除水量に加えた形で透析時間内に除水を行うというものです。
この補液と除水を繰り返す方法によりHDで施行される均等な除水と比較して循環血液量の減少を緩やかにし、末梢循環の維持が可能となりました。また、間歇的に補液の物質交換が促進され、効率良く組織間液中の老廃物除去を行えることなどが挙げられます。
オンラインHDF・i-HDFによる治療は血液の安定・かゆみの抑制・イライラ感の改善・透析アミロイド症の抑制に効果があります。
透析アミロイド症とは、人工透析が長く続くことによって発症する合併症が透析アミロイド症です。
人工透析は血液中の老廃物を取り除くものですが、除去しきれず体内に残ったたんぱく質が、アミロイドと呼ばれる繊維に変わり、関節の周辺の組織などに蓄積していきます。そして、神経を圧迫して、ひどいしびれや痛みが続くようになってしまいます。
透析装置の進歩により、たんぱく質の除去機能は高まっていますが、高齢化で透析期間が長くなり、透析アミロイド症に悩む患者様はさらに増えると予測されておりますので、当院では透析アミロイド症の抑制に効果のある最新機器をいち早く導入しています。
当院は、最新機器の導入に留まらず、全ての患者様により快適な人工透析治療を受けて頂けるよう、環境面にもこだわった人工透析センターとなっています。
人工透析を受けている患者様の中には、「ベッドの高さを変えて欲しい」「足を上げて欲しい」などのご希望があっても、なかなかスタッフに声をかけられずにいるということを耳にすることがあります。
そこで当院では、頭・足の部分、ベッドの上下などのポジションを、手元スイッチで簡単に操作できる3モーター式の電動ベッドを導入しています。
いつでも快適な姿勢で、ゆっくりとお休みになられながら人工透析をお受け下さい。
人工透析は長時間にわたる治療ですので、患者様に少しでも快適に過ごして頂けるよう、各ベッドにDVDの再生が可能なテレビを設置しています。
そして、事前にご連絡を頂けましたら、ご希望のDVDを当院にて入手し、そちらをご覧頂きながら人工透析を受けて頂くことが可能です。
当院では、患者様のご自宅から当院まで「DOOR to DOOR」の無料送迎サービスを行っております。
特に、ご自身で通院が困難で、ご家族の送迎もご無理な方については優先的にサービスを提供させて頂きますので、どうぞお気軽にご相談下さい。
1. | 送迎車内では院内と同じ対応はできませんので、体調が悪い時などはご利用をお控え下さい。 |
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2. | 乗車中に具合が悪くなった場合には我慢せず、早めにお申し出下さい。 |
3. | 交通事情などにより、予定時刻に送迎できない場合もございます。 |
4. | 透析時間・曜日を変更された場合には、ご利用できない場合もございます。 |
5. | 万が一、送迎中交通事故が発生した場合は、道路交通法に基づき自賠責保険・任意保険の適用範囲内での補償になります。 |
当院では、お仕事などでお忙しい患者様のために、22時00分(最終入室時間:4時間透析の方で17:30)までの夜間透析を行っております。
平日夜間に人工透析を受けて頂くことで週末も有意義にお過ごし頂けるなど、より充実した生活設計のお手伝いができれば何よりです。
当院では、ご旅行やお仕事などで当院近くを訪れに患者様のために、臨時透析も承っております。
尚、ご希望の際は、現在治療を受けている透析施設とご相談の上でお問い合わせ頂き、臨時透析予定日の2週間前までに診療情報提供書・透析条件・健康保険証などの写しを当院にお送り下さい。